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百合子は、必死になって走りながら思った。
〈 早く家に帰りたい。
家に帰って部屋にこもり、悪夢が去っていくまでじっとしていたい 〉
長くて薄暗い廊下の窓を、横殴りの雨が激しく叩きつけている。
外はどしゃ降りの雨。
でも、百合子は傘を持っていなかった。
〈 外に出たら、すぐにびしょ濡れになってしまう 〉
百合子がふとそう思ったときに、薄暗い空に稲妻が走って空が明るくなり、次の瞬間に雷鳴の轟音がした。
〈 外は大雨……。
でも私は、家に帰りたい 〉
百合子は長い廊下を走り抜け、廊下の角を曲がり、昇降口に辿り着いた。
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