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百合子は足音がする階段の方に目をやり、顔を歪めた。
いなくなったと思っていた悪霊が、ゆっくりと階段を上ってきている。
傷だらけのおぞましい顔に笑みを浮かべ……。
血がにじんだ白いレインコートを着て……。
右手に果物ナイフを握りしめて……。
そして悪霊は、階段の踊場に立ち、百合子の方に顔を向けた。
百合子は、目の前にいるおぞましい顔の悪霊が恐ろしくて、顔が引きつり、体が震えた。
〈 私は、この悪霊から逃げられないの? 〉
悪霊は、踊場から再び階段を上り始めた。
一歩……。
また、一歩……。
百合子はどうしていいかわからず、泣きながらカタカタと震える膝に力を込めて立ち上がった。
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