第1章

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茉莉が立ち去った後の部屋では、異様な静けさに包まれていた。 先程の出来事を、未だ受け入れることが出来ないのであろう。 「父上…茉莉は…」 唐突に長男、煌が口を開いた。 「あぁ、間違いないだろう。」 「何故…何故記憶喪失に…」 そうー 茉莉は記憶を失っていたのだ。 愛する家族のことも… あの忌々しい出来事も… 言葉、知識、そして習慣以外の全てを消し去ってしまっていたのだ。 「それより…朧(ロウ)は見付かったかい?」 統が執事の一人、献兎に尋ねた。 「いえ…依然として足取りすら掴めません。」 「そうか…」 「父さん、茉莉に真実を話さないで良いのかい?」 今まで沈黙を守ってきた次男、静が口を開いた。 「話したところで何になる?混乱させるだけだ。それに、僕は茉莉が苦しむ姿はもう見たくないんだ。」 「だけどさぁ…」 「その件については、また後日話し合いましょう。今日は各自、休養をとることに専念した方が宜しいかと…」 「あぁ、そうだな。」 献兎の提案を受け入れ、4人は部屋から立ち去った。
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