第1章

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少年がいつもと違うことに気付いたのは夕食後だ。 いつも夕食後には誰もこの場所には近付かない。 しかも聞き慣れたわざと抑えている様な靴音ではなく、静かだがしっかりと聞き取れる靴音が此方に近付いてくる。 すると直ぐに錠が開く音が聞こえ、靴音が少年の前で止んだ。 「顔を上げなさい。」 少年の頭上から若い男性の声が降ってきた。 少年は言われた通りに顔を上げた。 すると突然少年の瞳に光が映された。 そう、少年の目隠しが外されたのだ。 光といっても、蝋燭一本分の弱々しい光だったが… 少年は必然的に目の上の相手を見上げることとなった。 長身で整った顔立ちを持つその男性は、艶やかな漆黒の長髪を後ろで一つに纏め、細長いフレームをした眼鏡を着用していた。 表情は無い。 「ご主人様がお呼びです。」 その男性は起伏の無い声で少年に伝え、少年の手足の枷を外した。 「付いてきなさい。」 少年は大人しくその言葉に従った。 少年は六年ぶりにこの牢獄の外へ出たのだった。
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