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少年がいつもと違うことに気付いたのは夕食後だ。
いつも夕食後には誰もこの場所には近付かない。
しかも聞き慣れたわざと抑えている様な靴音ではなく、静かだがしっかりと聞き取れる靴音が此方に近付いてくる。
すると直ぐに錠が開く音が聞こえ、靴音が少年の前で止んだ。
「顔を上げなさい。」
少年の頭上から若い男性の声が降ってきた。
少年は言われた通りに顔を上げた。
すると突然少年の瞳に光が映された。
そう、少年の目隠しが外されたのだ。
光といっても、蝋燭一本分の弱々しい光だったが…
少年は必然的に目の上の相手を見上げることとなった。
長身で整った顔立ちを持つその男性は、艶やかな漆黒の長髪を後ろで一つに纏め、細長いフレームをした眼鏡を着用していた。
表情は無い。
「ご主人様がお呼びです。」
その男性は起伏の無い声で少年に伝え、少年の手足の枷を外した。
「付いてきなさい。」
少年は大人しくその言葉に従った。
少年は六年ぶりにこの牢獄の外へ出たのだった。
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