『崩壊へ』

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「ただいまぁ!」 玄関を開け、明るく言う。辛い顔を家族には見せたくない。 事実を記事にして世間に訴えることで戦うと決めたのは私。 辛い思いをしているみんなに心配をかけるわけにはいかない。 「絢子ちゃんおかえりなさい。」 キッチンに顔を出せば、夕飯を作っているお母さんが振り返り挨拶を返してくれた。 目の下にクマ、頬が痩けていて顔色が悪い。 そんな母を見て顔をしかめそうになったのをなんとか堪え、笑って席に着いた。 「母さん、…。あ、絢子お帰り。」 「ただいま。…ってあれ、なんでいるの?」 二階からお兄ちゃんが降りてきたけれど、たしか今日は塾の講師のバイトの日のはずなのに。 「ん…、あぁ、バイトもう来なくていいって言われた。生徒さんの親から電話かかってきたって。」 (なに、それ。) お兄ちゃんはなにもしてないのにどうしてって、そんなのおかしいって食い下がりたかった。 でも兄の辛さの混ざった笑顔を見たら、私は何も言えなくなってしまった。
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