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お昼前、リビングでファッション雑誌を読んでいると買い物に出ていた母が慌ただしく帰ってきた。
見ると母の顔は真っ青、買い物袋を持つ反対の手には週刊紙が握られている。
「あ…絢子(あやこ)ちゃんこれ見てっ…!」
母が震える手で週刊紙を開く。開かれたページを見て、あたしは愕然とした。
数日前、大手出版社の記者・西原來未(にしはらくみ)という女がうちに取材に来た。
内容は最近近所で起きた女子大生殺人事件について。
殺害された人が兄と同じ大学の人だということは知っていた。
その事についてかと思えば、記者は、あまりにも酷い質問ばかりを兄にぶつけてきたんだ。
『被害者についてどう思いますか?』初めはそんな軽い質問。
でも次第に取材の意図が見えてくる。
『事件当日何していましたか?』『被害者に相当酷い目に合わされたと聞きますが、恨んでいますか?』
気の弱い兄はひたすら素直に、律儀に質問に答えていく。
「何が言いたいんですか?」
そんな兄に痺れを切らし、私が聞いた。
「…剛(つよし)さんの、犯人の可能性を考えています。」
女記者の、聞きたくもない言葉。そんな事当然否定し、記事の掲載も絶対にないように言った。
こればかりは気弱で温厚な兄もさすがに言ったよ。
なのに、どうして載ってるの?
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