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「佐藤さんが…これお兄ちゃんの事じゃないかって教えてくれて…。」
自分の心臓の音が大きく聞こえる、息が荒くなる、…目が、霞んでくる。
お兄ちゃんはこの事もう知ってる?どのくらいの人がこの記事を見た?この記事を見て、どう思った?この週刊紙、日本全国に発売されていたっけ?考えることが多すぎて、頭が追い付かない。
「ご近所さんにももう結構広まってて…あぁ…お兄ちゃん…。」
母が体を震わせ、視線をさ迷わせ、うわ言のように言う。
(お兄ちゃん…!)
流れる涙を拭って、二階の自室にいる兄のもとへ急いだ。
かける言葉なんて浮かばない。それでも、早く側に行きたかった。
ノックもせずドアを開けると、兄は椅子に座り机に向かっていた。
私が部屋に入ったのに振り向かない。様子が、おかしい。
「おにい、ちゃん…?」
おそるおそる近付けば、兄が手にケータイを持っていることがわかった。
「お兄ちゃん?」
無反応な兄、不審に思い兄の持つケータイを奪い取った。
それでも、反応しない。
兄のケータイに目をやれば、メールの画面が開かれていた。
メールは、週刊紙の事。律儀に該当ページの写メが添付されている。
しかも内容は兄を心配するものではなく、週刊紙の事を茶化しているものだ。
メールの送り主を見れば、普段兄から一度も名前を聞いたことがないような人だった。
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