明けの空

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チャーリーが戸惑っているのが手に取るようにわかる。姿が見えない分、気配と声色で感情が漏れ出てしまう彼が少し不憫に思うくらいだ。 外の空気は冷たいわけでも生暖かいわけでもなく、ただ灰色の世界を静かに漂っていた。 「・・・怖くないの?」 不思議で仕方が無いのかもしれない。あたりまえだ。一体どの世界に死ぬのが怖くない人間がいる。それが例え、どの意味の死を差していたとしてもだ。 「私は。」 浅く息を吸い込む。煙が優しく肺を流れるような、心地よい苦味を感じた。 「さっき彼に言ったよ。」 チャーリーは黙ったまま。こいつ、都合が悪かったり理解が追いつかないとすぐに黙るんだ。 「命を賭けてるって・・・」 それだけ言うと開け放たれたドアに背を向け、流し目気味に続ける。 「それは死ぬことなんか、どうでもいいってことだろ?」 チャーリーはやっぱり応えない。信じられないという表情で私を見ているか、うなだれているかの二択だろう。 「だから・・・」 「なぁ」 不意に遮られた。 「俺は死にたくないんだけど。」 あぁ、そうか。こいつと私は一心同体だということを、すっかり忘れていた。 「ははは!悪かったな!私が死ぬとお前も漏れなく道連れだったな。」 「・・・・・・・・・・・・。」 嫌な沈黙。少し独りよがりが過ぎたみたいだ。 「・・・気をつけるよ。」 うん、とチャーリーが力なく返事を返す。ふと先程投げかけられた疑問が、渦を巻いて迫った。 死ぬことが怖い・・・?そういえば少しも考えたことがなかった。 ・・・嫌なノイズが頭を掻き毟る。いつもこうだ。擦り切れそうな記憶の中。もう何度も忘れようと、上から書きなぐって散々破ったはずの光景。あの忌まわしい目・・・。 「・・・り!ゆかり!!」 私を呼び止める鋭い声で我に帰った。チャーリーは咎めるように言う。 「また・・・思い出したんだね。」 私とチャーリーは二人で一つだ。私が死ねば彼も死ぬ。けれど、思考や記憶までリンクしているかといえば、それはなかった。少なくともチャーリーのことを全ては知らない。彼には私が何を考えていたのか、だいたいのことは見えているだろうが。
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