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いつからだろう。
自分の姿を気にしなくなったのは。
どうしてだろう。
この世界が灰色で満ちていることに疑問を抱かなくなったのは。
空が灰色をかぶり、だるそうに雲が流れる。
恐らくここは自宅だった。洒落た装飾の内装、光のよく入りそうな部屋の作り。澱んだ灰色の空気で満ちた空間でしかない大昔の我が家に、ボクはまだ懐かしさを感じることができずにいた。
そもそも自分は誰なのか―
この世界が色で満ちていると思えなくなったのは一体いつの頃からだろうか。耳で感じる音は錆び付いて重く、目に入る景色に色はない。指で触れて手の届くところにあったあのきらびやかで綺麗な色彩の輝きは、もうどこにもない。
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