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人の中身を見る力。
骨や肉が見えるように、心の中が透けて見えるらしい。
ミスター・レントゲンなんて冗談で名乗っていたが・・・
そのチャーリーが、見えないと言っているのだ。
「・・・手強いの?」
チャーリーは少し間を置いてから、ぽつりと答えた。
「何も・・・ないんだよ。」
「・・・は?」
言っていることがうまく飲み込めなくて、思考が止まってしまった。
「見えないというよりか・・・‘‘あれ’‘の場合、そもそも何もない箱を覗いてるような感じなんだ。」
チャーリーは本当に困った口調で続ける。
「どれだけ押し殺そうとしても見えるもんなんだよ。感情なんてのは特にわかりやすいからね。奥に閉じ込めていても、存在そのものが消えない限りはずっとそこにあり続ける。」
うまく動かない頭にすり込むように、相棒の語る事実に耳を傾けた。
「だから生き物は感情で塗りたくった油絵みたいに映るんだ。人だけじゃない、犬だってカエルだって、感情でべったべたになってる。」
「感情は他の感情に変わることはあっても突然消えてなくなることなんてないんだ。一時的に霞んだ状態になることはあっても、決してなくならない。」
「なぁ、ゆかり。」
不意に呼ばれてひどく焦った。
「・・・その呼び方はいい加減に・・・」
「気をつけた方がいいよ、あいつ。」
チャーリーらしからぬ、真面目な忠告。
「もし‘‘刺客’’だったら・・・!」
私はドアに向かって歩くと、静かに開いた。灰色の草木が重く佇んでいる。
「それがなに?」
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