0人が本棚に入れています
本棚に追加
チャーリーが戸惑っているのが手に取るようにわかる。姿が見えない分、気配と声色で感情が漏れ出てしまう彼が少し不憫に思うくらいだ。
外の空気は冷たいわけでも生暖かいわけでもなく、ただ灰色の世界を静かに漂っていた。
「・・・怖くないの?」
不思議で仕方が無いのかもしれない。あたりまえだ。一体どの世界に死ぬのが怖くない人間がいる。それが例え、どの意味の死を差していたとしてもだ。
「私は。」
浅く息を吸い込む。煙が優しく肺を流れるような、心地よい苦味を感じた。
「さっき彼に言ったよ。」
チャーリーは黙ったまま。こいつ、都合が悪かったり理解が追いつかないとすぐに黙るんだ。
「命を賭けてるって・・・」
それだけ言うと開け放たれたドアに背を向け、流し目気味に続ける。
「それは死ぬことなんか、どうでもいいってことだろ?」
チャーリーはやっぱり応えない。信じられないという表情で私を見ているか、うなだれているかの二択だろう。
「だから・・・」
「なぁ」
不意に遮られた。
「俺は死にたくないんだけど。」
あぁ、そうか。こいつと私は一心同体だということを、すっかり忘れていた。
「ははは!悪かったな!私が死ぬとお前も漏れなく道連れだったな。」
「・・・・・・・・・・・・。」
嫌な沈黙。少し独りよがりが過ぎたみたいだ。
「・・・気をつけるよ。」
うん、とチャーリーが力なく返事を返す。ふと先程投げかけられた疑問が、渦を巻いて迫った。
死ぬことが怖い・・・?そういえば少しも考えたことがなかった。
・・・嫌なノイズが頭を掻き毟る。いつもこうだ。擦り切れそうな記憶の中。もう何度も忘れようと、上から書きなぐって散々破ったはずの光景。あの忌まわしい目・・・。
「・・・り!ゆかり!!」
私を呼び止める鋭い声で我に帰った。チャーリーは咎めるように言う。
「また・・・思い出したんだね。」
私とチャーリーは二人で一つだ。私が死ねば彼も死ぬ。けれど、思考や記憶までリンクしているかといえば、それはなかった。少なくともチャーリーのことを全ては知らない。彼には私が何を考えていたのか、だいたいのことは見えているだろうが。
最初のコメントを投稿しよう!