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いつもの見慣れた街並み……といっても全てが灰色の化粧をして、どこがどの道なんてのはわからないのだけど。どういうわけか、うまいことやっぱりここに辿り着く。
灰色の大きな門に、鬱蒼と生い茂る鉛の草木。これが一体どんな目的でなんの為に建てられたものなのかも、ボクは知らない。今さら気にしようとも思わないが。プレートもなく名前すらわからないのだから、きっとコイツは海をフラフラと浮かぶ流木や打ち捨てられた浜辺のゴミと大して変わらないだろう。灰色の中でも、不思議と親近感が湧いたのを覚えている。
鉄で出来ているのかわからない扉をそっと押す。埃が手に触れる感触はない。こんな世界じゃ、物が重いのか軽いのかは見た目なんかじゃわかりっこない。扉は思ったよりあっさりと開いた。なんだかホッとする。
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