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「さよなら」
冷たく放たれた一言で我に帰る。哀しそうな顔は、泣きたくなるほどの無表情に変わっていた。
待って……と言ったのかもしれない。声にならない叫びが一体誰の耳に響くというのだろうか。気づいて笑いが出た。どす黒い円を指で描いていた彼女もつられて微笑む。睨んだものを凍りつかせて眠らせ続ける、心をなくした人形の眼差しの、そのままで。……この笑みで幸せになる奴なんて、きっといないだろうな。すらりと伸ばされた細い指が吐きたくなるほどの暗闇を作り出していく。次の瞬間には、もう彼女の目の前でその暗闇がぱっくりと大きな口を広げていた。
「もう・・・ここまで」
笑みは消え、後には暗く、そしてどこか寂しそうな表情があった。彼女は真っ直ぐ暗闇を見つめると動かなくなる。
「ふは・・・うははははははは!!!」
ぎょっとするような高笑いが突如飛び出すと、彼女は力強く
「じゃあな!アディー!!」
とだけ叫んだ。
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