空から降ってきた天女

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満月な綺麗な夜道を歩く四つの人影。 「なー、総司ぃ。」 「なに、平助。」 「そぉぉぉぉぉぉぉぉじぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。」 「煩い。新八さん。」 「総司ぃ。飲みなおそうぜー。」 「もう今日は飲みませんよ。 佐之さん。」 一人だけ通常な男が三人の馬鹿そうな酔っ払いを引きずりながら歩いている。 新選組最強と謳われる剣豪沖田総司だ。 馬鹿そうな三人は槍の使い手とされる切腹傷が見事な原田佐之助。 隊内一と思われる肉体美の永倉新八。 子犬のような愛らしい顔をしている藤堂平助。 沖田ははぁと溜息をつきながら思いながらふと空を見上げる。 今日は月が綺麗だな………… 風流とかよくわからないが一番最初に出た感想。 そんな月をボーッと眺めていると人のような何かが空から落下してくる。 人のような何か………。 違う!本物の人!! 「人ぉぉぉおぉぉ!!」 普段中々叫ばない冷静沈着な沖田が叫び声をあげた。 「どぉしたんだぁ。総司ぃ。」 「へ、へ、へ、平助!空!! みんな空見て!!」 「人ぉぉおおぉぉ!?」 あのままだと地面に激突して死ぬと判断した沖田は走り出した。 間に合え!間に合え!間に合え! 心の中で復唱する。 呪文を唱えるように。 ポスッ 滑り込み間一髪のところで抱きとめた沖田は安堵の息を洩らした。 先程の衝撃で酔いがぶっ飛んだのであろう藤堂が自分より体のでかい男を必死に引きずって走ってきた。 「そ、総司。 その女の子はどこから来たんだ?」 「え、見てなかったの平助? 空から降ってきたんだよ。空から。」 「だよな。 空から降ってきたんだよな。」 「この女の子は 奇抜な着物を着ているな。」 言われてみれば珍妙な着物を着ている。 「とりあえず屯所に連れて帰ろう。」 いつの間にか酔いがさめている永倉が冷静な判断をする。 「佐之は俺に任せてとりあえず屯所に帰れ。」 永倉は未だ酔っ払っている原田を指差す。 「ありがとう。新八さん。」 沖田がニコリと微笑み藤堂と走って屯所へ向かっていった。
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