ご飯に箸を刺すのは縁起悪い

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4月2日。春休みが終わる2日前。 朝です。心地よい春の日差しが眩しい、春休みの麗らかな朝です。 僕はそんな母以上の温もりの中にいてまどろんでいた。 アラームなんてかけてない、寝れる時間まで寝てやろう。人間はいつまでも限界に挑戦しなくてはならない。 「お兄さま今すぐ起きないとベッドをそのままへし折りますわよ!?」 「おぅわぁ!! ビックリしたー!!」 せっかく限界に挑んでいたのに、僕の2個下の妹・沙谷加(サヤカ)が刑事顔負けの前蹴りで部屋に突っ込んできた。朝から意味がわからん。 「お前、兄の部屋に突撃する妹がいるのか…?」 「突撃じゃありませんわ、可憐な妹によるモーニングコールですわよ」 「気持ちわる」 「ひどい!!」 沙谷加はなぜか昔からお嬢様口調だ。黒髪のツインテールも昔からで、中学では陸上部のエースだった。“黒ウサギ”のあだ名が付いていたくらい。 「て言うかお前な、部屋に入る時ノックするのが常識だろ…。ノックがキックに置き換わってるじゃねぇか」 「ノックってコンコン鳴ればよろしいんじゃないですか?」 「……馬鹿がいる」 こいつは中学に上がってから馬鹿になった。それはもう天才的に、馬鹿になった。 「両手空いてんなら手を使ってコンコン鳴らせよ…。足で蹴破るとか意味わかんねぇから」 「こうでもしないとお兄さま起きないではありませんか。私(ワタクシ)としてはお兄さまと一刻も早くイチャラブしたいのですから、こういう起こし方はありですわ」 「ねぇよ、その発想は…。とにかく僕は二度寝するからな」 「ふふん…そんなこと言っていて大丈夫なのですか?」 「なに…?」 沙谷加は腕を組んで仁王立ちし、おとがいを上げて僕を見下すように見た。チビの癖に生意気なやつだ。 不適な笑みを浮かべ、ついでビシッと指を指して言った。 「今日から新学期なのに?」 「な…」 僕はガバッと起き上がり、 「なんだってぇぇぇぇええぇぇえ!?」 家中に響き渡るほど大絶叫した。
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