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浮かぶ様な、沈む様な、飛んでいる様な、落ちている様な、眠る様な、起きる様な、矛盾しながら、それでも近い不思議な感覚。 その中に漂う意識を手放しかけた時だった。 『ほう…そなた、名は何と申す?』 声、というよりも、意識に近い言葉で問われ、少し微睡みから意識が戻る。 ―名前…? そういえば、此処は何処だ…俺の名は…? 反射的に手足の感覚を確かめると少し己の輪郭が判った。 此処は何処だ…? そう思うとまた言葉が入ってくる。 『そなた、名も居場所も、何も、無いか。』 そんな事は―、そう言い返したくなるが直ぐに諦めた。 此処が何処か 俺が誰か 問われて考えても、純粋に、判らない。 ならば何もないのかもしれない、と思う。 『…直に、知ろうよ。そなた、運が良かったのう。』 そう言った後にくくっ、と苦笑の様なくぐもった笑いが聞こえた。 それが俺の、始まり。
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