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「はぁ…。」
向かい隣にある、最近できた真新しい花屋を部屋の窓から眺めて、小さくため息を吐いた。
わたし、井上 春乃<イノウエ ハルノ>は特別花が好きというわけじゃない。
花を見て、まあ人並みには綺麗だなーとは思う。
そう思って、終わり。
育てたいとか欲しいとかは、はっきり言って全く思わないし、そんなこと思うような性格でもない。
だけど、今わたしの部屋にはいくつもの花が飾ってある。
普段すっごく殺風景なこの部屋に、
そんな可愛らしいモノがあるのは不思議な気分で…
なんだか居づらいと言うかくつろげないと言うか。
(なんだかなあ…)
ため息の原因の一つはそれ。
もう一つは、その花屋で働く少年のこと。
「あぁ~!もう!!」
壁に思い切り枕を投げつけて叫ぶと、隣の部屋から「うるさい!」とお姉ちゃんの声がした。
ただでさえ受験勉強でイライラしているのに、また怒らせちゃった。
だけど、今はそれどころじゃないくらいのモヤモヤが、頭の中を支配している。
ふいに時計を見ると、既に針は11時を回っていた。
(早く寝ないと…)
もそもそと布団に入り、目を閉じる。
外は静寂そのもので、昼間のざわついていた街の余韻
は少しもない。
「今日も寝れない、かぁ」
呟いて、布団を深くかぶった。
目を閉じると浮かぶのは、優しく微笑む少年の顔だった。
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