君の好きな花は

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「おはようございます。今日も来てくださったんですね。」 柔らかい笑顔でこちらを見詰める少年に、心臓がひどく高鳴る。 ドキドキが彼に聞こえないように、ぎゅっと自分の胸元を押さえた。 顔が熱くなり、マトモに前を向けない。 (あ~!かっこよすぎだよ) 彼の名前は神崎<カンザキ>。よく知ってる。 …といっても、ネームプレートを見ただけだから、直接本人から聞いた訳ではないけど。 いつかは下の名前も… そう夢見て、早1ヶ月が過ぎようとしていた。 全く進展が無いから、どうすればいいか悩んでいるけど、それを誰かに相談することはできない。 だって恥ずかしい、もん。 それに、もし言ったところで皆、笑ってわたしを冷やかすに違いない。 『春乃はオクテだなぁ~』とか、『今すぐ告っちゃえ告っちゃえ!』とか。 だから助言を求めることはできないし、したくない。 (まあ、顔を覚えてもらえただけでもかなりの進展かな。) 神崎さんは毎日ここで働いているらしくって、近所でもかなり評判がいい。 色素が薄い柔らかそうな髪に、見ていると自然に和むような優しい瞳。 声や雰囲気で、少し幼い印象を受けるから、きっとわたしと同じくらいの年齢なんだろうな。
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