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ある晴れた日の昼下がり。私は何時ものように、材料の買い付けに出掛けていた。
ガラスに、布に、陶土に、ビーズ。それら全てを持って帰るのは、女の私には厳しい仕事だ。
最近やっと涼しくなってきたのが、唯一の救いだろうか。
季節は晩夏。もうじき秋がやって来る頃だった。
「あら、カルメンちゃん。お使い?」
そう声を掛けてきたのは、近所に住む中年の女性だった。何度か話したことがあるのは覚えているが、名前までは覚えていない。
私は興味の無いことは直ぐ忘れる質だから、聞いたことはあるかもしれないが…。
「ええ、材料が切れたものですから。色々と買い付けに。」
「まだ若いのに偉いわねえ。家の子供たちなんて、カルメンちゃんより歳上だって言うのに家事手伝いもしないのよ?この間だって…。」
一つ、彼女についての事を思い出した。それは、彼女が話好きだと言うことだ。
今、こんなところで時間を潰すような暇は私には無い。言い付けられた仕事の途中であるし、こうしている間にもあの人は私を待っているのだ。
「あの…すみません、急いでますので…。」
「あらやだ。私ったら何時もの癖で話し込む所だったわ。ごめんなさいね、呼び止めたりして。」
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