1人が本棚に入れています
本棚に追加
私は軽く頭を下げ、その場を去ろうとした。
けれども、その背中に再び彼女の声が掛けられる。
「あ、そうそう。カルメンちゃん、余り一人で出歩いちゃ駄目よ?最近物騒なんだから…。」
「物騒…ですか?」
「ええ、知ってるでしょう?この辺りで起こってる連続殺人事件。この間だって、隣町で女の子が殺されたらしいわよ。犠牲者はみんな、カルメンちゃんみたいに可愛い子だって言うし…。だから私、この町でも起こるんじゃないかって、心配で心配で…。」
そう言って、不安げな表情をする女性。私はそれに対して、笑顔を浮かべて応えた。
「大丈夫ですよ。この町も、人も。」
「…そうだと、良いけれど。」
そんな女性の呟きを背に、私は再び歩き出す。目的地は直ぐそこだ。あの人に会えると思えば、自然と足も軽くなる。
最初のコメントを投稿しよう!