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「申し訳ありません、遅れてしまって…。」
予定より、10分程の遅刻。それだけ、彼の仕事が遅れたと思え。私は自分にそう言い聞かせる。
「いや、一人で重い荷物を持ってきてくれたんだ。謝ることなんてないさ。いつもありがとう、カルメン。」
こんな私にさえ、優しい言葉を掛けて下さる彼こそが、私の愛しいシリル様。頭脳明晰、容姿端麗。天から二物も三物も与えられた御方だ。
元々は医者だったが、先の大戦に軍医として従軍した際に両足を負傷し、歩けなくなってしまった。その為今では医者を止め、仕事で培った手先の器用さを活かして人形師をしているのだが、その身の周りの御世話をするのが私の役目という訳だ。
「それでは、買ってきた材料はいつもの所に締まっておきますね。」
「うん。…あ、そうだ。カルメン、やっと人形が完成したよ。」
「えっ…?もう、ですか…?」
シリル様の言葉に、私は驚きの声をあげる。
“材料”を手に入れてから、まだ一週間も経っていない。幾らシリル様とは言え、早すぎるのではないだろうか?
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