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「午後からずっと保健室で寝てたから……起きたら真っ暗でアセッたけど………なんで?」
あくまでも知らないと言いきってくれているのだろう。
でも、最後の“なんで?”が冷たく言い放たれたような気がした。
せっかく止まった涙が、また溢れ出してくる。
「カバンが…教室に残ってたから…。よく覚えてないけど…世良くんが今持ってるカバン…」
声だけでなく、不安で身体まで震えてしまう。
寒いんじゃない。
怖いんだ。
「みっ…見たんだよね。さっきの…」
「見てないよ」
「私と……三好先生とっ…」
「俺が見たの、三好先生だけだよ。暗くてよく見えなかったけど…」
見た、見てないの言い合いが始まる。
どれだけ私が確信していても、世良君は見ていないと言いきる。
何も…知らないと。
「はぁっ………やだ…。最悪……。ごめん、取り乱した…」
頭に手を当て、少し自分を落ち着かせる。
呼吸も乱れ、私の中は混乱していた。
(なぜ…言ってくれないの…?
見ていたのに…黙っているの…?)
たとえこんな事を言っても、世良君は見ていないと言うだろう。
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