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そのまま世良君に手を引っ張られ、学校を出る。
あたしの冷たい手が、暖かい手に包まれる。
それだけでも、胸がドクンと高鳴った。
「じゃぁ転んでよ。すぐに好きになってとか…言わないからさ」
世良君の一言一言が、あたしの心に光を照らしてくれる。
本当はこんな簡単に転んではいけないのに、世良君ならいいかもしれないと…気持ちが揺らいでしまう。
雪はまだ降っている中で、あたしたちは傘もささずに雪の地面に足跡をつけていく。
「今は……まだ三好先生を好きな高月のまンまでいいから…少しずつでも…オレって人間も見てくれたら嬉しいんだけど」
強く結ばれたその手。
離れることなく、また、離そうとする事もない。
ついさっきまで先生が触れてた指…
今感じているのは違う人の体温……
「うん……」
世良君の優しい言葉よりも、今は先生の事が頭の中で沢山流れていた。
初めてであった場所。
初めて会話した時。
放課後での逢瀬。
いつかばれてしまうのではないかというスリル感。
そして、いつも繋がっていた教室……
全てが一気にフラッシュバックして、涙と共に流れていった。
ため息を一つこぼし、ずっと先生だけを考えてしまっていた。
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