17人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
携帯の表示には名前がない。
番号だけが表示された画面で、あたしはその電話に出た。
「は……はい」
『高月?』
声の主は、さっきまで聞いていた人。
「せ……世良くん?」
流れていた涙をごしごしと手で拭き取り、鼻をずっずっとすする。
泣いていたなんて知られたくなかった。
そうだった番号……
さっき交換したのに打ち込んでなかった。
「今日……送ってくれてありがとう。遠回りなのに……風ひかなかった?」
『大丈夫だよ。つーかオレが心配して電話かけてンだけど』
でも、世良くんがこんなにもあたしを心配してくれていたなんてわからなかった。
『高月がまた……一人で泣いてるんじゃないかと思って……』
そんな……なんで…
なんでわかるの……?
『やっぱ……かけて良かった』
「…………っ」
なんであたしが泣いていたことわかったの……?
『今から……逢いに行っていい?高月は家から出なくていーから。近くで話がしたい』
世良くん……
世良くんの言葉が、あたしのことをわかってくれたのが嬉しくて。
さっきまで先生のことを考えて泣いてたことなんて忘れてた。
こんなに嬉しいなんて、あたし自身でもビックリで。
世良くんの言葉が暖かく感じた。
最初のコメントを投稿しよう!