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「オレの事は大丈夫だって。それより……高月、もう……泣いてない……?」
どうしてそんなに優しくしてくれるの?
あたしが泣く……?
泣いてなんか、ないよ。
もう、あたし……
「うん……泣いてない」
泣いてなんか、ない。
なのに、ポロポロと涙はこぼれてくる。
思わず自分の口を塞いでしまう。
雫は止まることを知らずにどんどん流れてくる。
頬を伝って、手に流れて、やがて柔らかい雪の上に落ちる。
でも、この涙の正体はわかる。
「だって……世良くんが来てくれたから」
嬉しいの。
そう……
あたし、嬉しかったの。
少しずつ知ってゆく恋も、
「嘘ばっか。今……泣いてンじゃん」
アリだと思う……
涙が止まらないあたしを、世良くんはそっと抱きしめる。
世良くんの腕の中は、とっても安心して、悲しいことなんて全部忘れてしまいそうだった。
雪が降って凍えそうな寒さの中、二人の心はとても暖かかった。
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