新しい恋

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「オレは……高月を無理に笑わせるために来たんじゃない」 オレは、高月を心の底から笑わせるために来たんだ。 そんな顔は見たくない。 そんな……涙を溜めて笑う姿なんて…… 先生と別れたばかりで、 消えてしまいそうな高月に元気になってもらうために。 少しでも、心の支えになれれば良いと思って来たんだ。 だけど、高月はまだ…… 「ごめん……オレが高月に無理させてンだよな……」 高月はまだ、先生のことを忘れていない。 少しでもオレに振り向いてくれたら、なんてそんな都合の良い話なんてある訳がない。 別れたばかりなのに、声を聞いただけで泣いてしまうくらいに。 高月は先生を好きなんだ。 「…………」 「…………」 オレが謝った瞬間、 高月は力が抜けたように何も話さなくなった。 オレも、何を言えば良いのかわからず話さなかった。 眉を下げて、焦点も合わずに呆然とする。 オレには高月を笑わせるどころか、悲しい顔をさせている。 「そーやって世良くんもずっと……”ごめん”ばかりを繰り返すの?」 「え?」 「男の人はいつも謝ってばっか……」 「…………」 「男の”ごめん”は一番傷つくんだけど……!」 「…………!!」 「謝られたら、何ももう言えなくなるのわかってて……ずるい」 ああ、もうダメかもしれない。 オレには、高月の涙を拭ってあげることはできないのかもしれない。 おまけに高月を傷つけてしまった。 『三好先生を好きなまンまの高月でいーから』 オレは確かにそう言った。 なのに、オレが心を狭くしてどうすんだよ。 好きなままで良いって言ったの、俺自身なのに。 高月が少しでも。 オレを必要としてくれればいいって。 先生を忘れてくれるキッカケになればいいなと思ったんだ。 だけど、高月はまだまだ先生のことを忘れそうにない。 それは俺だってわかる。 だって、ずっと見ていたから。 先生に頬を赤く染める、可愛い高月を。 先生と愛し合う、高月の姿を。
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