I wish you be Happy forever...

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あたしが急に教室の扉を開けたからなのか、 中にいた人が驚いてビクついていた。 手に持っていた紙の束が何枚かヒラリ、ヒラリと床に舞い落ちた。 中にいた人をよく見ると、 あたしは驚いた。 寒い空気の中、白い湯気を立ててあたしの息遣いだけが音を立てていた。 「おはよう『高月』。早いな」 「おはよう……ございます……」 教室の中にいたのは、先生。 あたしが大好きだった、三好先生。 時刻は六時を五分ばかり過ぎた頃。 あの頃とは違う二人の時間…… 『もう下の名前で呼ばないで』 あたしが最後に言った言葉を、ちゃんと守ってくれる先生。 二人きりなのに、『先生』はもうただの先生になってしまっていた。 そのことが、少し胸を締め付ける。 チクンとした痛みが胸に刺さった。 ああ言ったのはあたしなんだし、これが当たり前の形なんだけれど…… やっぱり、痛い…… 胸が痛いのは、 きっとまだあたしが完全に先生のことを忘れ切れていないからなんだと思う。 そう思うと、 もう下の名前で呼んでくれないことがとてつもなく悲しくなった。 もう、先生にとってあたしは特別な存在ではないことを示しているようだった。 もう、あたしたちは終わった。 もう既に終わってしまった関係なんだ…… 先生は落ちたプリントを拾いながら、あたしに話しかける。 「昨日の夜……電話した時。聞こえたの……世良の声だった」 「……………」 「実はオレよりオマエの方がしたたかだったって事か……。オレは……正直面倒くさいお前も見てみたかったンだけど」 「……………」 やめて。 やめて、やめて…… その声に。 その言葉に。 「あんな遅い時間に一緒にいたんだ?高月、世良と……付き合ってンの?」 凍りつきそうになる。 先生は、嘲笑ったような声であたしに言う。 傷ついたような震声で、あたしはまた違った胸の締め付けを感じる。 もう、これは恋じゃない。 終わってしまった恋なんだ。 もうあたしに話しかけてくれる温かい言葉なんてない。 それどころか……あたしを責めるの……?
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