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四月。
新しいクラスで、あたしは海斗と再び同じクラスになった。
大学進学・就職などと様々な進路ガイダンスを受け、そろそろ自分の進路について考えなきゃいけない時期。
来年の春には、もうこの学校に通ってはいない。
自分の未来を掴むためにも、大切な一年。
もちろん、あたしと海斗の関係も少しずつ変わってきていた。
「比奈」
「海……斗……?」
以前まで苗字で呼びあっていたあたし達は、お互いの名前を呼ぶようになった。
すっかり慣れてもいい頃なのに、あたしは比奈と呼ばれることにまだ慣れない。
それは、あたしが海斗を好きでいる証……なんだと思う。
恥ずかしいから。
照れるから……いろんな理由があるけれど、
大好きな人から優しく呼ばれるこの名前が、とても好きになっていく。
そして、先生……
三好先生は、あたし達が三年生へ進級するとともに先生を辞めた。
結婚して実家を継ぐために、自ら教壇を降りた。
これは、あたしが先生と別れる時に聞いた話。
「高月、お前は自分の信じた道を行けばいい」
離任式の後に残して言った言葉は、今でも忘れられない。
これは、あたしが先生の"元カレ"だったからじゃない。
ちゃんと、"三好先生"からの言葉だと思って胸に刻んだ。
その日以来、あたしは先生と連絡どころか顔すら合わせていなかった。
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