I wish you happiness forever...

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先生の連絡先は、まだアドレス帳に残ったまま。 あたしから連絡することも無いし、先生から来ることもない。 先生に未練はないけれど、ただあたしが残して置きたかっただけ。 海斗と付き合いだして、半年。 ……ただ、何も変わらない平凡な日々を繰り返していた時だった。 「先生に会うのも、久しぶりか。何ヶ月ぶりだっけ?」 「離任式以来だから、四ヶ月……?」 「先生も、こんな暑い日を選ばなきゃいいのに」 「先生達にも都合があったんじゃないの?」 あたしの家のポストに一通の招待状が届いた。 先生の……三好先生の結婚式の招待状。 似合わない礼儀正しく印刷された文章の最後には、ご丁寧に "高月もぜひ来て欲しい。世良と二人で" なんて手書きで書かれていた。 もう"ひな"と呼んではくれない人からの言葉は、心から海斗との交際を喜んでくれているようにも見えた。 そして、今に至る。 お母さんの運転で、あたし達は結婚式場まで急ぐ。 「これ、結構暑いんだから」 「我慢我慢!会場だったらクーラーぐらい聞いてるって」 八月の気温にスーツは暑いのか、 海斗はさっきから不平不満を言う。 もちろん、それだけじゃないと思う。 あたしが元カレに会いに行くって言うから。 たとえ結婚式だとしても、少しはヤキモチを焼いているのかもしれない。 「先生の奥さん、どんな人なんだろうね」 「知らない」 ほら、やっぱり。 そんなところも、可愛いなんて思うのはおかしいことかな。 そんな心配しなくてもいいのに。 ……なんて思っても海斗には伝わらないのだけれど。
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