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あたしが手に力を込めたものが伝わったのか、
「先生」
さっきまで口を閉じたままだった海斗が口を開いた。
そして、そのままあたしの前へ出る。
「先生、高月は……比奈は、俺が護りますから」
「か……海斗!?」
「比奈、まだ先生のこと気になるンだろ?」
「………っ」
すぐに否定できなかった自分を疑った。
"違う"
この三文字が、声にならなかった。
……海斗の言う通り、あたしは先生のことを本気で好きだった。
本気で求めて、本気で愛を確かめあった。
簡単に……忘れることなんてできない。
「確かに、先生と比奈は恋人同士だった。でも……」
「海斗、やめて」
「でも、俺は先生と過ごして来たこと以上に比奈のこと大切にするから」
「海斗!」
「比奈を幸せにできるのは、俺だけだから!!」
「…………っ」
まるで、海斗は先生に宣戦布告をするように言った。
過去の、あたしと付き合っていた頃の先生に語りかけるように。
海斗は、あたしのことを本気で好きで。
本気で大切にしてくれる。
それは、付き合って半年間見てきてすごく伝わってくる。
あたしの前に立つ海斗は、とても凛々しかった。
私のことを愛してくれる、
一人の男の人だった_____
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