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「……高月、」
海斗の言葉を聞いた先生は、和やかな微笑みであたし達を見た。
「良かったな。大切にしてくれる人が見つかって」
あたしのことを気にかけてくれていたんだろうか。
どこか安堵が込められた言葉をあたしにかける。
「……はい。あたし、今すごく幸せなんです。世良くんに……、海斗と、一緒に居られてすごく嬉しいんです」
迷いはなかった。
幸せなのは、本当だから。
そして、あたしはこれからも海斗についていこうと思った。
困った時は、助けてくれる。
悲しい時は、側にいてくれる。
そんな海斗が、すでにかけがえのない存在になっていたから。
先生のこと、まだ気になっていたことは否定はしない。
でも、それ以上に……
あたしは海斗が好きなんだってことがわかった。
「……世良、」
「はい」
「必ず、その言葉を忘れるなよ」
「先生……」
「"ひな"を、幸せにしろよ」
先生からの言葉は、
過去の先生からのものだった。
あたしと付き合っていた頃の先生からの言葉だった。
まるで、
「俺が幸せにできなかった分、お前が幸せにしろ」
とでも言うように。
最後の最後で、あたしの名前を呼んだ。
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