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俺達は俺が走ってきた道を静かに歩いていた。
賑やかなはずの学園は、何処か不自然で静かだ。
『お前達二人は風紀室へと行け。』
俺は自分のカードを二人へと持たせる。
「…え、あの、これ、………。」
二人はじっとそのカードを見つめる。
その顔は不安が全面に押し出ていた。
『お前達は信頼されたいんだろう?だったらそのカードで自ら風紀室へと行って風気委員長に包み隠さず話すんだ。…カードは俺のものだと言って風気委員長へ渡しておいてくれ。』
「こんな、大事な………ものを?」
「も、もしかすると生徒会室に入っちゃうかもしれないんだよっ?」
『…好きにすれば良い。お前達次第だ。』
俺はくるりと二人に背を向けてまた歩き出す。
出来るだけ誰も通らないような所を通る。人に会いそうになれば足を止め、隠れたりもした。
制裁被害生徒の格好が不味いからな。
お喋りなこの学園の生徒はすぐに見たものを人に言ってしまう。
それだけでなく、見たものに尾びれをつけて話すから厄介で仕方ない。
結局は悪い噂となる。
この生徒が今、そんな事になるのはキツいだろう。
只でさえ、親衛隊に目をつけられているんだから。
「さっきの言葉………。」
急に制裁被害生徒が口を開く。
それに俺は慌てずに反応する。
『言葉?それがどうした?』
「あれ、僕に言ったんじゃ無いって分かってるけど………っ、妙にしっくりきて……。」
…あぁ。そう言えば人は一人だ、とか言ったな。
泣きそうになっている制裁被害生徒には気づかないふりをしながら、話を聞く。
「僕、ぼ、くっ………怖かっ、た。」
唇を噛みしめ俺の白いTシャツを掴む手は震えていた。
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