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それっきりなにも言わなくなった制裁被害生徒に俺はゆっくり話しかけた。
『人は多分ずっと一人なんだ。でも、人を感じると幸せになる。』
「……感じる?」
『大事な人の側にいたりとか、心が通っていたりとか…もっと簡単な物だったら人肌に触れていたら暖かいと感じるだろう?』
「でも………それって矛盾して………?」
『ああ、そうだな。でも、そういうものなんだ。きっと。』
「どういう事………?」
不思議そうな目の前の瞳をしっかりと見つめて俺は口を開く。
『俺はお前の事を嫌いじゃないと言うことだ、竹田 昌八。』
「っ!?」
今度は見開かれた瞳に面白くなってつい笑みを溢した。
「っえ、…なん、名前…、という、か………笑ってる…?」
『ああ、悪いな。…ところで、お前はあの転校生に振り回されてる一般生徒だろう。こうなる前に手を打てなくて悪かった。』
「えっ………なんで知って………。」
『これでも生徒会役員だからな。一応全生徒の名前と顔は知っている。』
「あ、そう………なんです、か。」
それからまた静けさが支配した空間に居心地悪そうにいる竹田は何か言いたげな顔をしていた。
『そろそろつくぞ。』
大きな渡り廊下をさっと走り、目標としていた保健室の扉を開ける。
竹田をベッドへと座らせ、俺は保健室のロッカーを開いて制服を探す。
「…勝手に開けていいの……ですか?」
ひっつけられた敬語は、それでも何処と無く親近感を感じる。
副会長のものとは随分違うな。
『ああ。ここの保険医はいつも何処かで寝ているからな。それはもうぐっすりと。』
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