食堂は食事をする所だ

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この学園は大きい。意味はあるのかと思うほど。因みに、先程から十五分は歩いている。お金持ち学園なら、何処もこうなんだろうか。 それ程歩いて漸く見えてきた食堂を前に、耳栓を取り出した。 俺はこれでも抱かれたいランキング三位、不本意ながらも抱きたいランキング三位だからな。 生徒会やランキング上位者は騒がれるのが常だ。耳栓はふざけているのではなく、本当に必要なんだ。奴等の黄土色の悲鳴には、悪いが精神的な面で芳しくない。 その上学園を余り歩かないから俺は珍しいんだそうだ。だが残念ながら俺は男に騒がれても嬉しくない。そもそも騒がれる事を知っているなら大抵の人はそれを避けようとするだろう。俺が必要以上に外を出歩かないのはそう言う訳なんだが。 しかしだからこそ時たまこうして出歩くと、その視線と悲鳴は二倍になる。 しっかり耳栓を装着してこれまた食堂の馬鹿みたいに大きい扉を開けると、 「「「「キャーーーーッ!!!」」」」 「「ウォーーーーーッッ!!!」」 耳栓越しでも食堂を揺らす大声が聞こえてくる。俺は半ば諦めて周囲の生徒に悟られない様に耳栓を外した。どうやら既に耳栓で対応出来る域を越えているらしい。 というか、こいつらのこの反応の早さは何なんだ。何時も食堂の扉を見て飯を食っている訳でもないだろうに。 「宮島様が来られたってことはっ!?」 「生徒会の皆様も来られるってこと!」 「食堂イベントが実現するぞーー!!」 「抱かせろーーーーー!!!」 「お美しいです、宮島様ぁ!!」 煩い。周りの迷惑を考えてくれ。 異性愛者だろう奴らの顔が死んでいるぞ。 俺はその死んでいる顔の集団に軽く頭を下げると、いまだに騒いでいる親衛隊や特殊な趣味の奴らに向き直った。 『少し静かに。』 口許に指を持ってきて少し首を傾ける。するとだいだいの奴らが惚けたり、顔を赤くしたり、前をおさえたりして、黙った。 これには何時も困惑する。使える物は使う主義の俺は、自分の容姿も武器になるなら勿論使用するが、それと心情は別だ。 同性の俺の仕草一つで動かされるこの学園の特殊な生徒を見て、俺は溜め息を吐きたくなった。 …仕事に取りかかろう。
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