食堂は食事をする所だ

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しかもディープキス、親衛隊には屈辱だろう。ポッと出の不潔な格好の転校生が、そんな待遇を受けるのは。 シーンと静まり返る食堂で真っ先に我に返ったのは先程転校生に殴られそうになっていた親衛隊の小柄な生徒だった。 「ど…して、かいちょ、さ…ま?」 よほどショックだったんだろう、彼は息を吐き出す様に言葉を紡ぐ。 それに気付いた会長は汚ない者を見るような目を親衛隊員に向けると彼を突き飛ばした。 俺は正直驚いた。確かに会長は親衛隊を好んでは居なかった。それは俺も知っていた。 しかし、少なくとも会長は、こんな事をする人ではなかった。嫌っていても見下していても、手を上げたりなんてしない。それは、大企業の子息としてのモラルもそうだし、会長のプライドだった。 なによりも、人を無下にしてはならないと言う常識を良く知っている筈だと俺は思っていた。 突き飛ばされた親衛隊員を見た親衛隊総隊長達は立ち上がるが、キスのせいでよろけた転校生が皿やらコップやらをひっくり返し、それがかかったことで足止めをくらう。 俺はそれを横目で見ながら突き飛ばされた親衛隊員を抱き止め、脇の下で抱えたまま転校生がキスされた事に怒った一匹狼、もとい大上と距離を詰める。 振り上げられた大上のその拳が会長に届く前に止める。 止められた事に驚いたのか目を見開く大上の拳を離し、親衛隊員をそっと床に下ろす。呆然自失な親衛隊員に、今は構っていられない。 口許に、笑みを浮かべた会長と視線が交差する。 熱を持て余したその瞳を見て、俺は悪い予感が的中したと思った。 一番嫌な方向へ転んだのだ。一筋縄では行かない。偽りの平和は破られた。 それを実感しながら、俺は、ゆっくりと口を開いた。
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