幸せってあっけない

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「な……か、…い、や…かん、する。」 嫌な予感? …まぁ確かに俺も二年のこの時期だと少し心配だ。特殊な趣味の奴等が言った通りの時期だからな。言ったのは知り合いの特殊な趣味の奴なんだが、まさか本当に現実になるとは。意味が分からない。 しかし、散々聞かされた話によると、パターンは違っても大筋はあるらしいからな。細かい所は覚えていないが。何度も聞かされたんだが、興味が無いのと只の物語だろうと思っていたから、右から左に流していたんだ。 こんな事になるなら、もう少し聞いていれば良かったのかもしれないな。 まぁ、どっちにしろ特殊な趣味の奴は騒がしくなるんだろう。親衛隊にも気を付けないと。そう考えると、少し面倒だな。どっちにしろ、転校生があの証明写真通りの見た目なら問題は勃発する。何せ、此所は生徒会を顔で選ぶ学園だ。早めに手は打っておきたいが…。 「…蒼流、」 おっと、ぐるぐると考えていたら袖がひかれている事に気付かなかった。 『何だ?』 取り敢えず返事をしよう。槙斗が何かを言っていた時も俺は考え込んでいたんだろうか。先程よりも槙斗が不安そうだ。頭の耳も垂れてるように見える俺は、やっぱり疲れている。因みに、尻尾も垂れ下がっている様に見える。 「無理、メッ…お、れもが…ばる。」 その言葉に俺はつい笑った。幸せだな、と感じる。癖があるが、昔から一緒にこの学園で育ってきた生徒会役員。恥ずかしい話だが、俺はこいつらの為なら何でも出来る。それくらい大事なんだ。 『ありがとう。槙斗』 へにゃっと笑いを返してくる槙斗の髪を、俺は撫でた。 お前らと過ごす、この忙しくも平和な日々を、俺は嬉しく感じているんだとひしひしと思い知った。
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