怒濤の歓迎パーティー

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それは、まるで、音の無い人形劇を見ている様だった。 マイクテストは、一応副会長にもして貰おうと思って、舞台から降りて生徒会の奴等が集まっている所へ向かったんだ。 けれど、そのマイクは俺が落としてしまった。 全身が急激に冷えて行く。その意味が分かるのに、どうすべきかは分からなかった。 聴覚が遮断された様に周りの音が聞こえない。この感覚は、二度目だ。 一瞬だって忘れた事の無い、あの時以来の感覚。 目の前のあいつ等もその話をしているんだろう。 じゃないと、説明がつかないじゃないか。会長の余裕の消え失せた顔。副会長の作り笑顔は剥がれているし、峰塚は酷く強い光を宿した鋭い瞳をしている。槙斗は怯えてしまっているし、紅華は完全に怒っている、逆に緑花は、不安に動揺していた。 音がなくたって、分かってしまう。ずっと、ずっと一緒に居たんだから。 何でだ、どうしてだ。お前等にとってその話題はタブーだったんだろう?何故今、此処で、そんな話をしているんだ。 微かに、槙斗の口がそうる、と動いたのが目に入った。…俺? 音の無い世界は、俺にはさほど意味がない。言っている事は大体読み取れるからだ。あの時の話で俺が出てくるなら思い当たるのは一つしかない。 透明度の高い緑の瞳が、頭を占めた。俺はあいつの笑った顔が好きだった。あいつが俺達と笑っている事が嬉しかった。あいつ等が、心を許した昔の友人。 ………もっとも、その時間を崩したのは俺なのだが。 体に溜まった熱い物を外に出せずに棒の様に立っていると、紅華が叫んだのが分かった。聞こえはしない。 ああ、激怒している。あんなに普段子供なのに。そうさせているのが俺だという事に気持ち悪くなった。 視線を外したくなったが、生憎と俺の体は俺の言う事を聞き入れたくないらしい。ピクリともしない体では、マイクも拾えない。 俺が今衝撃を受けた以上に、お前等は辛いんだろうな。 ………何が守りたい、だ。 結局、傷付けるのは俺じゃないか。 目の前で、会長が俺をおそらくは糾弾している。とても哀しげで痛々しい顔で。 ………何が一緒にいたから聞こえなくても分かる、だ。 分かっても、解決出来てないじゃないか。
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