新入生歓迎会の余波と不吉な予感

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薄暗い生徒会室で、俺は目を覚ました。 あれから。あの人が帰ってから、俺はどうにも仕事に集中出来ずに仮眠室へ入った。だからと言って眠るつもりも無かったんだが、結果眠っていたんだから仕様がない。 ふぅ、と溜め息を付いてから体を起こす。今何時なのか。時計を見上げようとして。 俺は息を止めた。 『…は?』 間抜けな音が部屋に響く。けれど、それは一瞬で掻き消えた。 『……、』 とうとう、こんな馬鹿げた幻まで見る様になったのか。 話にならないな。赤子でもあるまいし。 髪をかき上げて、シャワー室へと向かう。鏡を見て、自分がどんな顔をしているのか始めて知る。それはまるで、迷子の子供の様な。 ギチ、 奥歯を噛み締めた。俺が、する様な顔じゃないだろう。俺が、作った過去だった。 緑の瞳に、淡い髪色、体の其処ら中を機器に繋がれて。それでもあいつは笑うのだ。そして手を伸ばす。 「ねえ、蒼------」 ガンッ、 気付けば壁を殴っていて。俺は笑った。何だ、今更、後悔しているのか。ぐるぐると回る吐き気と、澄み渡った思考。 本当は、無くしたくなかったなんて。 今更俺が言った所で誰が信じようとするだろうか。あいつが望んでいたものは、きっとあんなものじゃなくて。 あいつが望んでいたものは、ただそれまでの様な日々。特に何の問題もない、良い所のお坊ちゃんだった、毎日が笑顔だった、あの日々。 ただそれだけ。だから、俺は。 その手を取ってはならなかった。 目を閉じれば、今でも鮮明に思い出す。 今先程、俺の前へ幻となって現れた光景。 目映い程の蒼い空。白い雲。多少壊れたフェンス。薄青の病院服。華奢な、細い身体に繋がれた何本かの管。 空を仰ぐ、その姿。凪いだ瞳に。 「ねえ、蒼。」 『なんだ。』 「ぼくが居なくなったら、みんな泣くかな。」 『泣くだろ。』 「そっかー。」 ゆるゆると、上がる口角。俺はそれを止めもせずに。ただずっと、あいつを見ていた。それこそ、一秒たりとも目を逸らさずに。 「蒼。」 『なんだ。』 「きょうはどうして、こんなに空が蒼いんだろうね。」 『それはわるいが分からないな。』 「そう?ぼくはね、」 『…?』 「蒼のおかげだって思ってるんだよ。」 『そうか。』 「うん。ねえ、蒼。」 『なんだ。』
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