6人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
**********
「行くぜ……」
刀真の瞳がゆらゆら、ゆらゆら、虚ろに揺らめき始める。
そして、直立したまま右手を木刀の柄に柔らかく置く。
刀真は『薙翔鷹鉤爪』に全神経を集中させていた。
対するは谷、刀真の先の一撃をかわし、次なる先を狙う。
谷にとっては一度見た技。
刀真にとっては一度見られた技。
しかし、刀真に迷いは無く、逆に刀真の異様な鬼気が谷を呑み込んでいく。
谷は受けの姿勢、唾を飲み込み刀真が動くその瞬間を待つ。
唐突に……
刀真が前のめりに倒れ込む。
谷の目が見開く。
刹那、刀真の体が床に消え突風の如く谷にへ迫る。
谷が後方へ瞬時に跳躍。
これでは刀真の竹刀は届かない。
タイミング、谷は頭にその事だけを残し右手に力を込める。
刀真の竹刀が空を斬る。
竜巻の様に舞う刀真。
そして次の瞬間……
「一本!!」
佐々木佳紀により、試合終了を告げる一声が発せられる。
そこには動く事さえ出来ず、竹刀を喉元に突き付けられる谷の姿があった。
最初のコメントを投稿しよう!