Lv2 第一試合

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 静寂な体育館に刀真の深い吐息だけが木霊する。 「勝負あったな」  刀真は静に竹刀を下ろす。  そして手早く面の紐を解き、大きく息を吸い込む様に顔から面を剥がした。  その時、ぶはっと。  谷政義は、まるで今まで凍りついた状態から息を吹き返した様に、荒く呼吸し始める。  慌てる様に手を震えさせ、面の紐を解き勢い良く床へと転がす。  刀真はそんな谷政義を残し、既に優也達の元へと歩み始めていた。  体育館は何事もなかったかの様に静かで、刀真が足を踏み出す度に軋む音を響かせる。  谷政義は刀真の背中を見送りながら先程の戦いを思い返した。 『体が動かなくなった……』 「御剣!いったい何をした!?」  刀真は半身で振り返り不敵な笑顔を浮かべる。 「何もしていない。言っただろ?破れる技じゃないって」  刀真はまた歩き出す。 「佐々木先輩ありがとうございました」  面を手渡す。 「いや、良いよ。面白いもの見せて貰ったし。」  刀真は佐々木と宮本それぞれと軽く会釈を交わす。 「優也、夢乃、帰ろうぜ!」  3人は体育館の外へと出ていった。  体育館は嵐の後の静けさの様だ。  しばしの沈黙の後、佐々木佳紀が谷政義に微笑み掛ける。  「谷君聞いても良いかな?」  谷政義はハッと気が付いた様に佐々木佳紀の方へ面を上げる。  宮本武明も気になる事がある様で壁に寄りかかりながら谷政義の方へ視線を移していた。 「ああ……」  二人に見詰められ谷政義は少し挙動不審気味に相槌を打った。 「何故、君はカウンターを打てなかったんだい?」  佐々木佳紀の質問はまたも体育館に静寂な時を造り出す。 「それは……」  谷政義はしばしうつ向き再度戦いを思い返した。
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