6人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
**********
--勝負の刻--
刀真と谷政義が間合いの外で竹刀を抜き睨みを合う。
そして、佐々木佳紀は審判として間に立ち、右腕で楔を打ち込む様に前へと突き出した。
「構えて」
刀真は正眼の構え、谷政義は左手に竹刀、左足を前にして半身で構える。
何者も立ち入る事の出来ない両者の間合い。
両者共、その必殺の空間で最初の一太刀を創造する。
ルールは簡単だ、真剣ならば致命傷になる箇所へ先に刀身で一本打ち込んだ者が勝ち。
腕や脚等は有効となり3本先取で一本となる。
一瞬で決まる事も考えられる。
佐々木佳紀の腕が振り上げられる、その一瞬を待ち息を呑む。
両者共、思考の中へ沈めば沈む程、その一太刀のため無意識の内に重心が前へと沈んでいく。
試合はまだ始まっていない。
しかし、両者の勝負は既に始まっているのだ。
体育館は無音に支配された空間と化した……。
……。
「始め!」
唐突に、佐々木佳紀の手が高々と振り上げられる。
最初のコメントを投稿しよう!