Lv1 第一試合 御剣刀真 対 谷政義

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 佐々木佳紀の声と同時に両者前へ。  刀真の間合いの更に内まで一気に詰まる。  先制は谷。  全身で押し付ける様な竹刀での一撃。  竹刀が勢い良く重なる乾いた音が響く。  刀真、竹刀の中程で受けると回転するように柄での打撃に転じる。  谷もまた更なる攻めに転じる。  突進する様な左の剣撃の勢いに任せ、突き出される右の拳。  交差する打撃、両者共に胸にめり込み後退りでよろめく。  この瞬間、共に目に見える程の隙ができる。  刀真、先を取り谷の間合いの外からの左から右へ横一閃。  避ける余裕の無い谷。  堪らず右腕で受け、即座に左の突き。 「な!?」  腕でガードされた事に驚く刀真、突きを身をねじるようにかわし距離を取るため全力で後ろへ跳躍する。 「有効!!」  佐々木佳紀の声が響く。  猛追しようとする谷。  しかし、剣先を額に突き付けられ牽制される。  止まるのは危険と刹那の間で判断し潜り込む。  しかし、刀真にはその刹那の間だけで十分だった。  谷が前へ踏み出す。  だが刀真との間合いが縮まらない。 「カゲロウ」  刀真は、右脚を大きく後ろへ引き半身で竹刀を突き付けていた。   そして今、左半身を急速で引き戻しているのである。  時を巻き戻す様に動き出した竹刀が谷に振り下ろされる。  誰もが『決まった』と思う瞬間。  刀真の竹刀が空を斬る。  谷は首筋に寒気が走るのを感じ咄嗟に膝から脱力し床に倒れ込んだのだ。   本能的からの無意識な反応だろう。  思いもよらぬ空振。  刹那、刀真は沸き上がる様な焦りを感じる。  それは、床に伏せた谷の目がまるで得物を見る獣の様に光を宿しているからだ。   
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