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直ぐ様、谷が獣の様に地を蹴る。
刀真に避ける余裕はない。
竹刀と竹刀がぶつかる乾いた音が響き渡る。
そして次の瞬間、鈍い音と共に刀真の体がくの字に曲がる。
刀真は谷の右拳を鳩尾に食らい苦悶の表情を浮かべていた。
食らい様で竹刀を振るうも谷は素早く身をかわす。
内臓が裏返りそうな痛みに耐えながら竹刀を構え、少しでも回復させようと大きく深呼吸を繰り返す。
刀真は追い詰められていた。
今、攻められれば受けきれないだろう。
しかし、谷は絶好のチャンスにも関わらず満足そうな笑顔で仁王立ちして刀真を眺め始める。
「どうだ御剣!朝の一発はキッチリ返したぜ」
それを聞き、刀真は一瞬間の抜けた表情を見せると直ぐに吹き出すように笑った。
あまりの喧嘩バカな谷に気が緩んでしまった様だ。
「結構利くな。正直甘く見てた。」
「だろ!」
「でもいいのかよ?」
「あん?」
刀真の唐突な質問に谷は首を傾げる。
「そこ、オレの間合いだぜ」
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