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しかし、谷はまたしても刀真の予想を上回る動きを見せる。
谷は空中で腰を捻り左手に持っていた竹刀を床に突き立てる様に打ち下ろし、体勢を立て直したのである。
そして刀真の渾身の一太刀は、この試合2度目の有効となる谷の右腕の防御で終わってしまった。
谷は急ぎ後ろへ飛んで刀真の間合いの外へ。
刀真は竹刀を片手で構えたままゆっくりと立ち上がる。
両者、睨み合いながら切らしたら息を整えていく。
「また腕か、だがもう後がないぞ」
『後がない』それを聞いて急に谷は険しい表情を見せる。
すると
「ちょっとたんま」
と言って構えを解いた。
刀真は構えを解かず谷を見詰めている。
「お前の方が剣術は上だと分かった。3本目の有効を取られるのも時間の問題だ。だけど有効3本じゃ正直つまらない。だからよ……」
谷は両手を腰にあて顔を突きだす様に背中を丸める。
そして、ニカッと笑顔を見せた。
『上だと分かった』と自身で言った様に、一部負けを受け入れた様な潔さを感じる笑顔だ。
「だからよ……最後にあの技を見せて欲しいんだ。山崎先輩を破ったあの技を。」
刀真は少し驚いていた。
まさか谷の口から『お前の方が剣術は上だ』なんて聞けると思っていなかったからだ。
刀真は、構えを解き肩の力を抜いた。
「分かったいいぜ、だけど一度見たからと言って破れる技じゃないからな」
「ありがとよ。ところであの技何て言うんだ?」
「ああ、薙翔鷹鉤爪っていうんだ」
(チヲカケルタカノカギヅメ)
そう言って刀真は、左手に竹刀を納刀する。
谷も左手に持っていた竹刀を右手に持ち変え一撃を狙う様に構えた。
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