十六燭…深紅

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力! 普通の人間が、手にする事のできない力! 享は、優越感に浸りながら『深紅』のバックルを手に入れた日の事を思い出していた。 ―――――――――――――― 三日前… 《森の奥に建った洋館》 享「力を…与えるだって?」 桐人「そう、私は昔…君と同じゲイボルグだった。まぁ、裏方だったがね。そこで医療器具の開発、義手・義足…今は、あたりまえに装備している防護スーツの開発にも、協力したよ」 元ゲイボルグ…桐人は、懐かしそうに語っている。そして、本題を切り出した。 桐人「私は…身体も弱いが、心も弱い人間だ。母が事故死したショックから、ゲイボルグを抜け…『これ』を作った」 享は、部屋の奥へと案内された。そこには…ガラスケースの棺桶に入れられた美しい女性の姿があった。 享「これは…」 桐人「冷凍保存している。でも…生きてるみたいな肌の色だろ?この機械はね、パライーターの生命エネルギーを死者蘇生に必要なエネルギーに変換する装置なんだ」 死者蘇生!?そんな事が、可能なのか…そう思っている享の横をすり抜け、マリーが機械の横にある『鞘』のような物に剣を収めた。 すると… 死者蘇生装置が光り出し、女性の肌にわずかだが、生気が戻った。 享「君達は…お母さんを生き返らせる為に、戦っているのか…」 呆然としている享に、ヘィルが身体をすり寄せた。 ヘィル「イカれてるでしょ?マリーは…例え、母が生き返ってもパライーターと戦い続けるのよ♪兄への愛・母への愛が、なせる業。狂った兄妹よ。言葉じゃ言い表せないくらい、イイ色を出してるわ~」 微笑を浮かべるヘィルの目は…フェルとは、まったく違う感じがした。 桐人「享君。私には、時間がない。自分で分かる…もう、長くはないだろう。死ぬ前に、母の蘇生だけは成し遂げなければならない!今のまま…マリーが一人でパライーターを狩り続けても、目標エネルギー収集量達成は困難。だから…私は『コレ』を作った。自分で使おうと思っていたが…無理だった」 桐人は、ポケットから有刺鉄線が絡み合ってできた『バックル』を取り出し、享に渡した。 桐人「パライーターの死骸と、悪魔の細胞を掛け合わせて作った生体兵器『パライーター・アーマー』(以下、PEアーマー)これに血を吸わせれば…五分間だけ、超人的な力が手に入る」 享は、桐人から受け取った痛々しいデザインのバックルに血を与えてみた。
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