十八織…接吻

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《享》 ギィィィ… 森の奥に隠れた洋館のドアが、耳障りな音をたてて開いた。 桐人「やぁ、享君。どうだったかな…深紅は?」 享は、無言のまま桐人の母親が眠る棺桶にバックルを置き、倒したパライーターの生命エネルギーを転換した。 マリー「ちょっと、お兄様の質問に答えなさいよ」 部屋の奥で、マリーとヘィルがジュースを飲んでいた。マリーの声かけも無視し、享は話始める。 享「一日一回しかも、たった五分では、あまりにも足りない。僕は…また、何もできなかった」 蜘蛛型パライーター投縄は、確かに倒せた。しかし…ハルバードの前では深紅を装着する事もできず、梅原は重傷を負った。享は、またもや自分の無力さを噛み締める結果となった。 桐人「…深紅の使用には、血が必要なのだ。連続で使用すれば…君は死ぬ。しかし、どうにかならない事もないが…」 享「どうにか…できるのか!?」 沈黙する桐人。享は、桐人の目を見つめながら言った。 享「頼む…今のままじゃ…誰も守れないんだ…」 桐人「…携帯用の特製輸血パックを、持っていくといい。これを使えば、深紅の使用回数もアップする事が可能だ。ただし…副作用が起こる可能性もある」 享「副作用?」 桐人「深紅は、君の身体を疑似パライーター化させる生体兵器だ。使いすぎれば…おそらく、疑似だけでは済まなくなる」 二人の会話に、マリーが割って入る。 マリー「つまり、パライーターになっちゃうかもって事?人類を守る為に戦って、挙げ句の果てに化物になるって…最高にウケる♪」 桐人「それが嫌なら、リミッターをこえないようにする事だ。まぁ…私達は、君が約束さえ守ってくれれば…文句は無いがね」 マリーは笑いながら享の耳元で囁いた。 マリー「パライーターになっちゃったら…私が、逝かせてあげる♪」 享は、輸血を行った後…携帯用輸血パックをいくつか持って、たち去った。 享を見送った桐人は、小さな声でつぶやく。 桐人「君の守りたい人達が…その決断を喜んでくれるとは…思わないがね」 …夜は、更けていく…
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