5764人が本棚に入れています
本棚に追加
《梅原&フェル》
梅原「ぎぃっ!」
麻酔が弱まってきたのか…急に梅原が苦しそうな声をあげた。
舞「隊長、医師を呼んできましょうか?」
額に汗を浮かばせ、梅原は無理矢理な笑顔で答えた。
梅原「悪いな。頼む…」
舞は呼び出しボタンを押したが…反応が無かった為、自ら呼びに行った。
フェル「辛そうだな」
梅原「ツレェな…蜘蛛にビビッタあげく、部下の前で重傷負っちまったら…俺の自尊心ってやつが…ズタズタだ。めちゃめちゃ、ダセェ」
フェル「そうか?ジンギも言ってたが…俺からみたら、まぁまぁ男前だぜ」
梅原は、フッと笑う。
梅原「お前ってさぁ…マジで悪魔なのか?ただの、おっせかいな犬だろ!?」
フェルは、笑いながら答えた。
フェル「かもな。お前等みたいな人間は、珍しいから…ついついお節介になっちまう」
二人は、笑いながら天井を見上げる。
フェル「隊長さんよぉ…ガキが産まれるんだろ?もう、潮時じゃねぇのか?」
梅原「馬鹿デケェお世話だよ…俺には、嫁やガキ…それと、可愛くねぇ部下を守る義務があるんだよ!お前こそ、地獄やら魔界やらメルヘンファンタジーの世界に帰らなくていいのかよ?」
フェル「もう少しだけ、テメェ等を見守っててやるよ」
梅原「ホント、お節介だな…享を助ける為にそんな姿になってやがるし…笑えるぜ。なんで、そこまでする?」
しばらく、沈黙した後…フェルは答えた。
フェル「レイナってよぉ…優しい男が好きな、スゲェ単純な女なんだわ。だから、享みたいなのが良いかなって…な」
梅原とフェルは、馬鹿笑いをした。病院中に響き渡るくらいに…
梅原「ホンット…お前、お節介すぎ!恋のキューピッドにでも、転職しろ!」
フェル「ギャハハハハ!…あぁ…笑ったら、疲れたぜ…そろそろ寝るわ…梅原」
いきなり名前を呼ばれ、フェルの方を向く梅原。
フェル「死ぬなよ」
真っ白な天井に視線を移し、梅原は答えた。
梅原「…あぁ」
病室を、静寂が包みこんだ。
…夜は、更けていく…
最初のコメントを投稿しよう!