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《レイナ&享 Ⅱ》
レイナ「お前が言う、勇気ってなんだ?」
怒っている…と、言うよりも泣きそうな顔でレイナが問い掛ける。
享「…身の危険をかえりみず、先陣切って生存者確保に向かう姿や、戦う姿…それこそ、勇気がなければできないじゃないですか?」
鼻で笑うレイナ。少しヨロけて、地べたに座り込む。
レイナ「私は…パライーターに襲われてる人間が『自分』に見えちまうんだよ。一種の病気さ…それに、狂甲・悪食に『餌』を与えなければ、自分が餌になっちまう。お前の言う、勇気なんて言葉はカスリもしないんだよ!」
全ては自分の為…そう言い切るレイナを見て、享は何かを感じ取った。
享「…それでも、沢山の人間を助けているレイナさんが、僕の目には眩しく映るんです。いつも、自分の無力さに腹が立ちます。限定不死のような力があれば…そう思っていました」
レイナ「こんな力…」
享「確かに、リスクはあります。それでも…力がない人間が当然のように殺され、寄生されてしまう中で…レイナさんは生き続けている。『こんな力』なんて、言ってはいけない」
享を見上げるレイナ。
レイナ「わかったような事を…説教たれてんじゃねぇよ」
立ち上がろうとするレイナだったが、案の定ふらついている。足元が定まらない。
すぐに、肩を掴み倒れないように押さえる享。
享「…どうしたいんですか?」
長い沈黙の後、レイナは小さな声で言った。
レイナ「やっぱり…ハルバードとは…戦いたくないよ…私、ジュディも…この手で…」
レイナの目から、涙がこぼれた。享は、事情を知らない。しかし…一つだけ心に決めた。
享「戦いたくなければ…戦わなくてもいいよ。代わりに僕が、奴を倒すから」
レイナの涙を、拭いながら享は言った。
レイナ「できる訳、ねぇだろ…」
もちろん、享は本気で言っていた。しかし、レイナは自分を慰めてくれている言葉として受け取った。
レイナ「私の為に、戦うみたいな口振りだな。お前はナイトか?王子様か?」
享「まぁ…そんな感じですよ」
……レイナは、享の唇にキスをした。
レイナ「だったら、しっかりホテルまで送ってくれるよな?王子様♪」
頬を赤らめながら、享は頷いた。
…夜は、更けていく…
レイナ「もう一回!」
享「えーーー!?」
そして、二人で朝を迎える。
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