一食…高空

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アナウンスが流れる。 『まもなく、XXX便…トーキョー成田国際空港行きが出るぞ、コラ』 挑発的な内容だが…フランスでは流行らしい。 長距離国際線ジェット旅客機に乗り込む乗客達は、笑っていたり、無表情であったり、家族連れだったり、恋人同士だったり…サングラスをかけた黒いスーツの女が、一人だったり… サングラスの女「だりぃ~」 女は、怠そうに旅客機に乗り込んだ。 それから、数十分が過ぎ…旅客機は空へと飛び立った。2XXX年の旅客機は、ある一定の高さまで到達すると、機外に強力な電磁バリアを張る。それは、『外部からの攻撃』をシャットアウトする為の物である。 そう…2XXX年は、世界的に物騒なのだ… バリアに保護された旅客機は、難攻不落の空中要塞である。仮に、パトリオットミサイルを何発射たれても、屁でもない。内部にも、危機的状況に対応する機能が多種多様に備えられている。今では、旅客機をハイジャックする事は『人間には不可能』とまで言われている。 旅客機から見える景色は、とても美しい。街がとても小さくなり、都会の喧騒から解放されたような錯覚に陥る。 誰もが、ありもしない自由を夢見てしまう瞬間がある。『旅』の最中なら、尚更ではないだろうか? スチュワーデスが、機内を巡回する。その目に、ある女性が映し出された。 フランス人…あるいは、アメリカ人女性と見える女。年齢は二十歳前後。身長は…座っているので、ハッキリとは分からないが…おそらく160㎝くらいだろう。 サラサラした金髪のショートヘアで、黒いスーツを着ている。胸が見えそうな、きわどいイタリアン・カラーのシャツが、品位を見事に落としている。さらに左手には、今時パンクロッカーでも付けないような、ごっついリストバンドが見えた。 そんな彼女の手には、携帯電話のような物が握られている。
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