十四植…嫉妬

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なんとなく、覚悟を決めて上着を脱ぐ。胸元まで開いた半袖のイタリアンカラーシャツから、レイナの細く白い腕が見える。 左腕(肘から下)は機械仕掛けの義手となっているが、言わなければほとんど分からないくらい精巧である。 享「…綺麗な身体なんですね」 意外にも、レイナの腕には傷一つなかった。限定不死は、普通の人間と比較すると、かなり回復力が高い。もちろん、戦闘のさいは無数の傷を負うのだが… レイナ(き・綺麗な身体!?っても、腕と首…胸元しか見えてないよな?) 戸惑うレイナは、特に考えずに答える。 レイナ「ま、まあな」 享(考えて見れば、限定不死はパライーター以上の化物…最前線で戦っているとは言え、僕等のような普通の隊員とは違う。僕等は…特別な肉体を持ってる訳ではない。戦闘で重傷を負い、死んで行く。リスクを背負っているとはいえ、レイナさん!貴女は…) 享は、立ち上がりレイナに背を向けた。 享「結局は…恵まれている。と、言う事なんですね」 レイナ「は?」 嫉妬…力を持たない享は、レイナがどんな思いで戦っているかを、考えてあげられなくなっていた。 ガチャ… …バタン 何も言わずにドアを開け、享は部屋を出ていった。 レイナ「…あれ?そこで、帰るんだ…」 なんだか、妙にガッカリするレイナであった。 廊下を歩く享の前に、フェルが現われた。 フェル「よう…帰るのか?」 享「今も…僕からは、絶望や嫉妬のような、負のエネルギーは感じられませんか?」 フェル「レイナの力に嫉妬してるのか?俺達、悪魔にも人間にも…それぞれに役割ってのがあるもんだ。誰もが、舞台の真ん中で踊れる訳じゃねぇ。お前なら…分かるよな?」 享は、無言でフェルの横を通り過ぎて行った。 フェル「お前は、白いんだよ…俺が見た人間の中で、誰よりも…な」 部屋に戻るフェルの前には、下着姿を鏡に映しているレイナがいた。 フェル「…何、やってんだ?」 レイナ「いや…女性的魅力を再確認しようて思って…」 溜め息を吐くフェル。 フェル「享に、なんか言われたか?(嫉妬心から、妙な事を言ってなきゃいいんだが…)限定不死の事とか」 レイナ「べ、別に!?(やべっ…綺麗な身体とか言われて浮かれてるのがバレバレか?)なんにも言われてねーぜ!?」 結局、最後まで食い違ったままのレイナであった。
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